先を読む頭脳

将棋の羽生名人に認知科学の視点から迫る部分と、将棋のアルゴリズム強化を目指す人工知能研究についての内容です。
認知科学の用語で「メタ認知」とは、自分を見つめる視点を意味します。自分を客観的に見ることが自分なりの学習法を見つけるために効果的です。学習には2パターンあり、体で覚える感覚的学習と理解を伴う理論的学習です。これら両方が相まって学習が進みます。
将棋の棋譜を再現するときPCモニタで見るだけより、盤と駒を使って並べる方が身に付くといいます。これは能動的な学習であるからです。また、棋譜を読んで盤上で再現することは多様な表現間の変換を行っていることになります。
羽生名人は、指し手の大部分はマイナスの手だと言います。均衡した局面になると、何を指してもバランスが崩れて悪くなるのが一例です。それを避けるために含みを多く残せるかどうかに神経を遣うそうです。
将棋とチェスの違いは取った駒を再利用できるかどうかですが、将棋は駒を再利用できるがゆえに終盤戦の方が場合の数が増えてきます。つまり収束しにくいゲームなわけです。よってチェスのアルゴリズムほどはトッププロに近づけていません。詰みが発生する局面まで来ると一本道で場合の数が減って収束するのですが。囲碁はチェス同様、終盤戦へ向かうほど場合の数が減るので収束しますが、中盤までの場合の数が多すぎて未だアマチュア初段レベルです。


先を読む頭脳 (新潮文庫)

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